たまに顔見知りの同業の方からメールで質問されることがあります。今回は視力表を新規に入れ替えるので、「アドバイスをお願いします」とのことでした。既にメールで答えしましたが、多少さらに詳しく記述し、同業者の氏名はあかさずブログネタとしてここに書き込むことを了解して貰いました。

この同業者は
1)今までポラテストを祖とするパネルチャートを使っていた。
2)両眼視機能は偏光板式で行っていた。
3)偏光板使用の両眼視機能検査は続けるとのこと。

ポラテストはそもそも左右の単眼屈折値(=片眼遮蔽屈折検査度数。両眼開放屈折度数は正調のハーゼ・ドイツ式では求めませんし用いません。)を基に、明室で一部融像眼位下の斜位(Assosiated phoria)を測定するものですから、「筐体は白」が必須条件になります。パネルチャートもそれにならい全体が白色になっていた筈です。格好良くメーカーのロゴとか入っているものは、それが目的外の融像刺激になってしまうのでダメですね。
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また視標内部は白地を用いて、ターゲットそのものは黒が標準で、そこで出たデータを評価するわけです。たまにある反転した黒地+白ターゲット視標は、開発者・ドイツの故ハーゼ博士(ベルリン眼鏡光学専門学校)がオリジナルポラテストで想定した条件とは違うものになるので、出たデータの評価ができないということになります。ドイツ式の辻一央先生が常々おっしゃっていたと記憶しています。

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ドイツ式は運動性とともに感覚神経性斜位を測定することから、固視点付き視標が必要になります。ただしここでも黒地で固視点が白というのは投影式を含めてNGとなります。投影式そのものは通常、暗室眼位・融像除去眼位に用いられるので、それにポラテスト系視標が入っていること自体おかしいのですが。・・・それはともかく固視対象が明室で黒でないと固視点の目的である運動性融像の停止がいい加減になるからです。それから機器の後ろや側面の壁も白が望ましく、検眼コーナーの視野内には物を置いたりせず、視標のターゲットのみがポツーンと黒系のアクセントになっていて、あとはすべて白といが理想的な環境となります。
 この同業者は5mでパネルチャートを使っていたとのことで、5mのスペースはとれるわけですからスペースセーブ系チャートは回避出来るそうです。両眼視機能検査を謳いながら省スペース視力表を使うことは全くおかしいので、それは無さそうです。あとは以前に視覚機能研究会で、奈良の若手ドイツ式検者の松本と議論した時に彼が言っていた「潜伏し固定化された感覚神経性斜位」測定のため、第2立体視が必要となります(第1立体視に定規のような計測点があるもの)。ドイツ式は運動性斜位を補正し、黒い固視点を見せて眼球運動を停止させたあと感覚神経性斜位を検出します。ですから単に十字視標等で位置を合わせても部分矯正に陥ってしまい、それによる不具合があるとのことです。偏光視標は1つ1つの視標が独立しているような印象を与えることが運動性斜位だけ測っておしまい、という勘違いをしやすいところだと思います。ドイツ式の「十字テスト→コ字テスト→第二時計テスト→第一立体視→第二立体視」こういった手順を踏める機種は、はなかなか無いようです。(注)ここで言う立体視視標は、「どの絵が浮いて見える?」という立体感確認用ではありません。

今それができる視標はオプションとして第2立体視を付けたSC-1700POLAしかないのではと思います。第2立体視は辻先生がモニターの結果、メーカーさんへオプションとしての追加をすすめたことによるらしいです。あとは中古でオリジナルポラテストを探すかです。

まぁ私がおこなうスタイルとは違うので、これ以上のアドバイスは出来ませんが^^;